ぴぴえるによるOW語り

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面白くなる要素は多いのに……なアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活 2nd season」【002】

Re:ゼロから始める異世界生活 2nd season 62/100(良作)

第二回目はRe:ゼロから始める異世界生活 2nd season(以下リゼロ2期)です。この作品を取り扱おうと思った理由ですが、それは純粋に1期が大好きだからです。個人的には80、もしかすると90を超える名作とも呼べるアニメだったのですが、原作の所為か脚本の所為か、リアルタイムで追っていた二期は正直に言うと微妙でした。もう今更なので1期のレビューを個別で設けてするつもりは無いのですが、1期の内容に軽く触れつつ、2期のレビューをしていきたい所存であります。

 

re-zero-anime.jp

 

以下ネタバレあり感想

 

前半はめちゃくちゃ面白かった

微妙だと言ったにも関わらず、良作という風に点数をつけているのは、このアニメの前半部分は文句のつけようが無く面白いからです。物語はペテルギウスを見事に倒し、エミリアを助けた後の竜車の中から始まるのですが、実は既にレムがペテルギウスの仲間に襲われて、昏睡状態に陥ってしまいます。スバルはレムを助けるために自ら命を絶ち、死に戻りを発動させるも――既にレムが昏睡状態になっている場面からにしか戻れず、スバルはレムを失ってしまいます。

 

僕がリゼロを高く評価している理由の一つに、ストーリーを通して一つのテーマのような物を描いているという点があります。

1期は「死に戻り」つまり失敗を無かった事に出来る能力という、現代人からしてみればあまりにも強大過ぎる力を持ったスバルが、その力を使って問題を解決します。そしてスバルは二度の困難を乗り越る事によって自信をつけて、次に襲ってくるかもしれない困難に対しても楽観視するようになります。

つまりリゼロという作品は序盤、異世界転生してチート能力手に入れて「俺TUEEEE」をしているわけなんです。死亡という形で失敗はもちろんしていますが、基本的な構造としてそれは変わっておりません。

そして来る次の困難に、スバルは打ちのめされます。エミリアを助けるために何度も何度も死に戻りを繰り返すものの、結局全て上手くいかず、スバルは困難から逃げるために、自分を好きになってくれたレムに「一緒に逃げよう」という提案をします。(ここもかなり色々な思いや隠されたメッセージがあって面白いのですが、割愛します)しかし結局レムはそれを受け入れず、スバルに「諦めるな」と自身の思いを乗せてスバルを説得しようとします。

最終的にはスバルは立ち直るのですが、この時レムが自分の思いを伝えるのと同じように、スバルも自分の今までの自分への思いを告白します。ここでようやく、スバルは「自己嫌悪の告白」によって「強い力を手に入れる事と、強い人間になる事はイコールでは無い」という事に気付く、あるいは目を逸らさずに向き合うわけです。

ここの部分を物語全体を通して上手く描いているのが、僕がリゼロ1期を好きな理由なんですね。単純にただ失敗からの成功を描くループものではなく、スバルという人間の内面を深く描いた作品なんですね。

 

じゃあ2期はどうなのか?って話なのですが、2期もその基本構造は変わっておりません。2期で描こうとしている基本的なテーマは、「自己犠牲の愚かさ」です。

 

2期でスバルは序盤から、自己犠牲を繰り返します。「死に戻り」の条件は自分が死ぬこと。序盤レムを失う事が分かった瞬間スバルは自殺を決心し、実行に移します。結局、レムを救うことは出来なかったのですが、恐らく最終的に救う事が出来ないと判断するまでに、何度か自殺を繰り返したと思います。そして次なる困難にぶつかったスバルは、こう考え始めます。「どうせ死ねば無かった事になるのだから、好きに死のう」と。

スバルを俯瞰で見ている私たちは、このスバルの行為を「正しい判断」だと思い、ある種当然の事だとも思うんですね。だって死ねば全部無かった事になるのだから、本来人間にとって一番のリスクやデメリットであるはずの死が、スバルの視点からはメリットになるのですから。

しかしこれは、全く正しい判断では無く、言うならば「合理的な判断」なわけです。全部無かった事になるから、あるいはどうせされている側は気が付かないのだからと言って、モラルに欠ける行為や悪い事をするのは間違っています。例えるなら、死んだ人間はどうせ何も感じないのだから何をしても許されるのかと言われれば、そうではありませんよね?

スバルは大切な物を守るために、自殺という罪を、あるいは自分の心を犠牲にし始めます。他人の死に鈍感になり、死にたくないというごく普通の当たり前の気持ちを押さえつけ、傷つく事を厭わなくなり始めます。そんな状態で、例えばスバルが大切な物を救ったとして、未来はどうなるでしょう。もうその頃には、スバルには「大切な物」を「大切な物」として認識する能力が無くなっているのではないのでしょうか。

僕が2期で一番好きなシーンは、スバルに力を与えた魔女がスバルの前に現れ、「スバルを愛しているから、この能力を授けた」という風に語るシーンですね。これには痺れました。つまり魔女は、「スバルに死んでもいい能力を与えた」のではなく、「スバルに生きていて欲しいから、死なない能力を与えた」んです。スバルはそれをはき違えて、自己犠牲を繰り返し、多くの人々を悲しませます。それは2回目の試練でも、自分が死んだ後の世界線で悲しむ大切な者達という風にして、はっきりと描かれています。

そしてスバルは魔女に、自分の本心を打ち明け、自分に価値があるのかと問いかけます。魔女はスバルに愛されてもいいのだと伝え、スバルは好きな人たちと同時に「嫌いな自分」もちゃんと大切にすると、エキドナに伝えます。ここは本当にいいシーンだと思います。俯瞰で見ている私達の「合理的な判断」と、スバルの「自己犠牲」を一致させ、スバルのやろうとしている本来間違った事を違和感無く描き、そして改めてそれが間違っているのだと否定する流れは、とても素晴らしいものだったと思います。

 

ここまでは良かった……本当に

ここまでは良かったんです。ここまでは。この前半までのテーマを描ききって、そしてあと数話で解決!なら僕はこのアニメを高く評価していました。はい。この後に待っているのは地獄の回想編四部作です。

何が待っているのかを簡単に解説すると、この後は普通に困難を色々な人の力を借りて解決するのですが、普通にやれば4~6話くらいで終わる内容に、回想が挟みまくります。オットー、ガーフィール、エミリア、ベアトリス。総勢4名のテーマに関係ない過去回想があなたを待ち受けます。

しかも細かい所で言えばスバルも前半に1話を丸々使って回想(まあこれはテーマに繋がるので全然良いのですが)していますし、ロズワールとリューズの回想と言えるものもあります。いくら2クール分の枠でやってるアニメとは言え、この量の回想をやれば流石にテンポが死ぬのは自明です。あとオットー、ガーフィール、ベアトリスは仕方ないにしても、エミリアの回想タイミングの狙いが本当に僕には一切理解できないんですよね。エミリアが過去の因縁から立ち直るという状況を描きつつ、悲しい過去を描きたいなら、エミリアが最初に聖域の試練に挑んで打ちのめされる段階で、過去を描けば良かったと思うんですよね。あそこで何故勿体ぶったか知りませんが、どうしてもキャラクターと視聴者との気持ちでズレが起きてしまうんですよね。序盤試練が乗り越えられなくて苦しんでいるエミリアを見ても理由が分からないのでいまいち共感できず、後半は悲しい過去が判明しても、それを受け取る今のエミリアは一切悲しい様子を見せず冷静に語るため、これもまた盛り上がりに欠け、共感が難しいんですよね。これがまだもう少し回想を短くして前半に挟んでいれば、テンポは多少何とかなったし、ある程度キャラクターに共感できる場面になったのではないかと思います。描きたいものを描くのではなく、一つの大きなテーマを中心に描くべきもの取捨選択していれば、もう少しマシになったのかなぁと思います。

物語は基本的に足し算で作られるのですが、後に引き算を必ずすべきだと思います。いくら素材が良くても、組み合わせが悪ければ素材同士は必ず喧嘩してしまいます。ボリュームを大きくした結果、胃もたれする程になってしまった作品として、この辺りで筆を置かせていただきます。

今更Steins;Gateをやったのでレビュー【001】

Steins;Gate(ゲーム) 79/100点(良作)

 

記念すべき第一回目のレビューはSteins;Gate(ゲーム)です。この前インターネットが死んでいた時に、やる事が無くて暇なので一気にクリアまでやりこみました。CG&ED全回収で30時間くらいプレイしました。2009年のゲームを2021年にプレイしているわけですが、ここでは気にしない方針で行きます。

 

steinsgate.jp

 

 

以下ネタバレあり感想

 

まずシナリオは流石に評価されているゲームだけあって良かったです。タイムリープ物の作品としては、「主人公の大切な人が死んじゃうから、そのために何度もタイムリープを繰り返す」というよくあるストーリーではあるのですが、この作品が他と違うのは、「タイムリープ」についてうやむやにしなかったところです。

要はよくよく考えると時系列として成立していないよね?をちゃんと設定を決めてしっかりと成立させた所が、他と違う所な訳です。(所謂親殺しのパラドックスが作品内で起きないようにしている)

ただそれでいて、設定を詰め込めすぎた作品にありがちな、この設定いる?が全く無く、基本的にシナリオの核となる部分は丁寧な伏線も併せて綺麗に纏っていました。意外な展開や、黒幕の姿などについても、ちゃんと伏線が用意されていたのはシナリオとしてgoodでした。どんな形であれ理由があるのは、プレイしている時に「ん?」とならずに済みました。

このゲームのシナリオ上、どうしても複雑になってしまう世界線の話や設定も、「ダイバージェンスメーター」というわかりやすい形にして登場させる事で、「クリアするには、どうメールを送ればいいんだ?」では無く「この装置のパーセントが1超えたらいいのか!」にする事で、プレイヤーに分かりやすくゴールを示している所は、素直に上手いなぁと思いました。

 

また、登場するキャラクター達も良かったですね。どいつもこいつも個性が服着て歩いているみたいな連中で、そのキャラクターたちの掛け合いは面白く、やや冗長な場面も、個人的には楽しく見れました。

このゲームでは序盤、主人公が所謂厨二病で、根拠の無い自信に満ち溢れたかなり痛い奴ではあるんですが、だからこそ現実打ちのめされてその自信が揺らいだ時、そこから立ち直って自信を取り戻した時に、そのキャラクター性がより強く輝いて、とても頼もしい存在に見えるんですよね。

 

シナリオ、キャラクター共に申し分ない作品ですが、ただ正直に言うと、このゲームはぶっちゃけ良作止まりです。ゲームとしてみた時に、どうしても気になっちゃう所があって、そのせいで僕はこの評価が妥当かなと思っています。

それは分岐の面白さが全く無い所です。こんなに分岐が面白くなるストーリーは無いのに、本作はその面白さをいまいち活かせていない部分があると思います。まず、過去にメールを送るというシステム上、基本的にプレイヤー側にメールの内容を選ぶ選択肢はほぼ無いです。(全く無い訳ではないが、基本的に過去にメールを送る場合は選択肢が無い)

つまりプレイヤーにはメールを「送る」もしくは「送らない」の二択しか存在せず、しかも次に進むためにはメールを「送る」以外無く、送らなかった場合、直ぐにBADEND(便宜上そう言っておきます)に突入し、セーブした場面からやり直す事になります。

 

例えばこれが、極端な話プレイヤーがかなり自由にメールの内容を弄れたらどうなるでしょうか。序盤のDメールをある程度操作出来たらどうでしょうか。β世界線に行くためにプレイヤー自身が悩み、そして気が付けば取り返しのつかない状態になっていて、セーブ&ロードを使ってゲームをやり直す……まさに、Dメールとタイムリープマシンを使ってまゆりを救おうとする岡部倫太郎のゲーム中の状況の追体験ではないでしょうか?勿論、技術的な部分や脚本的な部分で難しい所はあると思いますが、出来れば相当面白いゲームになる気がしませんか?

 

元々アニメから入った人間なので(ゲームはもちろん面白かったのですが)結局の所、ほぼ一方通行のゲームなのでアニメ以上の何かが無く、「アニメで事足りる」の一言で片付いちゃうんですよね。

例えば僕がこのゲームを他の人に宣伝するなら、「ゲームは面白いけど、買うのが面倒ならアニメ配信見れば十分だよ」って言います。この作品は「ゲームも買った方が良い」とはならないです。なまじアニメがかなり良い作品だっただけに、「ゲーム」でしかできない事が殆ど無いこの作品は、そこで価値を落としていると思います。

 

あともう一つだけこのゲームに不満があるのですが(このゲームに限った話では無いのですが) それは「トゥルーエンドにたどり着くための条件が調べないと無理ゲー」な所です。僕は基本的に、ゲームのクリアはゲームの中だけで達成できるようにすべきだと思っている人間で、ゲーム中にヒントが一切なく、しかもDメールもタイムリープマシンも関係が無い条件で、ゲーム中どうすればいいんだと悪戦苦闘して時間を掛けていた自分が馬鹿馬鹿しくなりました。

 

シナリオやキャラクターがとてもいいゲームなのですが、「ゲーム」として見たときに、そこに面白さはあるのか?という点で、秀作に僅かに届かない良作という結論を出させていただきます。