ぴぴえるによるOW語り

時々OW以外のことも書きます。

OWLモデルの失敗。esportsの未来。

 2018年、満を持してOverwatch League(以下OWL)は開幕した。期待値は最高潮であり、誰もがその成功を信じて疑わなかった。League of LegendsやCS GOに並ぶタイトルになることを誰もが夢見ていたし、それらの称号は、手に届くところにあったと思っていただろう。

 ……しかし、蓋を開けてみればOverwatch Leagueは完全な失敗に終わった。初年度は少なくともひとまず成功と言える結果を残したが、それ以降OWLは右肩下がりであり、初年度を超えるような結果を生み出す事は叶わなかった。

 まだ終わっていないリーグに対して、「失敗」の烙印を押すのは時期尚早に思えるかもしれない。実際、後から盛り上がりを見せたesportsシーンもあったりはする。OWLにも勿論その可能性は残されていると言える。しかしながら、実はOWLは他のesportsシーンとは事情が少し異なるのである。その点について、少し話をしようと思う。

 

OWLの構造

 esportsのシーン構造は「世界大会方式」がメジャーである。各地域でリーグ戦を行い、優勝したチーム、あるいは規定によって定められた上位チームが世界大会に出場し、世界一の座をかけて戦う……という方式である。LoLや去年までのvalorantがこの形式でシーンを展開している。(「世界大会方式」はあくまで筆者が考えた名称であるのであしからず)

 対してOWLは「プロスポーツ方式」を取ろうとしていた。これはもう、簡単に言えばプロ野球である。東京読売ジャイアンツが東京ドームで試合を行うように、各国の都市名をチーム名に入れたそれぞれのチームが、それぞれの地域のアリーナでオフライン開催のリーグ戦を行うのである。

 今のOWLの状況を見るととても信じられないものがあるが、実は当初の計画ではここまで大規模なものだったのだ。実際2020年シーズン、このアリーナによるオフライン開催をOWLは実行するつもりであった。最も、その計画はコロナウイルスの拡大でとん挫し、胸を撫で下ろしたチームもあるのだが……それは別の話として、兎にも角にも、当初の構想通りの状況を展開できていないOWLは、間違いなく「失敗」というしかないのである。

 

かなり歪なesportsチーム経営

 ここまで聞くと、OWLの構想はかなり無茶なものに聞こえるかもしれない。が、実はこのモデルは、決して間違っているものではないのである。先も述べたように、OWLがやろうとしていた事は「プロスポーツリーグ」の追従であり、非常に真っ当なものなのである。"スポーツ"という名前を冠していながら、このモデル取っているシーンが殆ど存在しないというのは、なかなか考えさせられる話である。

 少し話を変えるが、皆さんはプロスポーツチームがどのように収益を得ているかご存じだろうか? その方法は大きく4つある。スポンサー収入、入場料収入、放映権収入、グッズ収入である。ある記事の引用であるが、プロ野球チームであると大体の内訳が入場料収入33%、スポンサー収入33%、物販収入15%、放映権収入15%である。*1

 もうこの時点で気が付いてしまった人もいるかもしれないが、esportsチームというのはこの収入のうち二つが存在しない。入場料収入と放映権収入である。厳密に言うと配信プラットフォームによる収入は映像権収入と言えなくもないのだが、これはチームによって大きく異なるためここでは一旦置いておく。兎に角、現状のesportsチームのほとんどがスポンサー収入をメインに経営しているのである。かなり誇張した言い方をするが、要するに他企業からの援助金で経営しているのだ。これがどれだけ危険な状態なのかは、言うまでもないだろう。

 OWLがやろうとしていた事は、この二本の柱である入場料収入と放映権収入を確保する為のものである。実際、OWLチームは毎年リーグ参入費を支払うことで、リーグで発生した利益をチームに分配している。OWL初年度はTwitchが9000万ドルで独占放映権を購入しており、2020年からはyoutubeが詳細額は不明なものの、独占放映権を購入しているのである。

 

OWLの失敗を、もっと重大事項と受け止めるべきであるという話

 OWLの失敗は、esportsの歪な構造収益の改善が不可能であるという結論をはじき出すものである――というのは、さすがに大げさではある。実際問題、OWLが失敗に終わった理由はプロスポーツリーグを踏襲した構造そのものもあるかもしれないが、他にも様々な原因がある事は確かであるからだ。しかしながら、この現実を重く受け止めなければいけないというのもまた事実である。今の親会社やスポンサード企業の体力任せの経営はどこかで崩壊が起きる。esportsバブルが弾けて消えないためにも、今後のesports全体の動向は、注意深く見なければならないのである。

Valorantシーンについて

 さてここで、もう一つこのOWLと同じとは言えないが、似たような形態をとっているシーンについて少し触れる。それがValorantシーンである。しかしながらこのValorantシーンの構造、かなり批判が多い。筆者事であるが、YoutubeでValorantのこの構造を批判する動画を見かけた。そのコメント欄はかなりの賛同者で溢れかえっていた。

 ……ただ、先も言ったように、今現在のシーン構造がもうすでに歪なのである。勿論、このモデルはesportsでは不可能という可能性もある。かく言う筆者も、不可能かもしれない理由がいくつか考えられるのだが、しかしながら、やらなければ待っている未来が悲惨なものである事は、既に語りつくしている。今後のValorantシーンの成否が、そのまま今後のesportsの未来として結果に表れるのかもしれない。

 

参考記事一覧

オーバーウォッチリーグ:当初の参入費用は200万ドルだった?OWL参入に興味を示さなかったイーロン・マスク―OWLの将来を不安視するブルームバーグの記事まとめ | d3watch.gg

[オーバーウォッチリーグ] Activision Blizzardを相手に法的手段に出るOWLチーム | d3watch.gg

【サッカー】爆発的な収益、欧州メガクラブのビジネスモデル

https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2020/05/esports-revenue.html